ということで、本日は「化け猫」の話
化け猫とは??
化け猫は、日本の妖怪の一種、その名のとおりネコが妖怪に変化(へんげ)したものであるが、猫又と混同されることが多くその区別はあいまいである、日本各地に化け猫の伝説が残されているが佐賀県の鍋島の化け猫騒動が特に有名である
猫は化けると言われる理由
「化け猫」はよく耳にする言葉ではあるが「化け犬」は聞いたことがない、では、なぜ猫だけが「化け猫」と言われるのか、一説では、猫は暗闇の中で目が光る夜行性であること、時刻によって瞳の形態が変わること、行動が身軽で制御しにくく、爪が鋭いことなどが上げられる、また、暗いところで黒猫を撫でると静電気で毛が光ることも昔の人には不可解で不気味だったのではないだろうか、因みに中国でも随の時代に、猫鬼(びょうき)という妖怪がいたと本に残されている、15世紀の中世ヨーロッパでは、黒猫は魔女が姿を変えたものだと信じられ長いこと人々から虐げられて来た、反対にエジプトでは、猫は神聖な動物と捉えられ「猫は9回生まれ変わる」という言い伝えもあり未だに人々に信じられている、要するに、犬と違って単独行動で足音を忍ばせ行動し簡単には人間には懐かないミステリアスな習性が人間の目には不気味に映り「化け猫」が生まれたのかもしれない
猫に九生あり
猫を神様として崇めていた古代エジプトでは「9」は三位一体の神がさらに3つ揃った数字であること、さらに、天地創造の神・湿気の神・夜の神・大気の神・大地の神・天空の神・生産の神・豊穣の神・砂漠と異邦の神の合わせて「九柱神」という9つの神様がいること、このことから「9」はとても神聖な数字であり、そのため「猫は9つの命を持つ」と言われるようになった
身体能力の高さ
猫は、優れたジャンプ力を持ち高いところから落ちても平気だったりと身体能力に長けている、本来人間であれば確実に助からないような高さでも猫ならば器用に着地できることから「猫は簡単には死なない、不死身だ」なんて思われていたのかもしれない、ちなみに、高いところから落ちても平気というのも限度があり、あまりにも高過ぎる、または、逆に低すぎて体制を整えられずに落ちた場合は猫でも怪我をしたり命を落としたりすることもある
生命力の高さ
災害で崩れた瓦礫の中や火事にあってもボロボロになりながらも生還したという話はわりとよくある事で、中には、交通事故で死んだと思われていた猫が墓場から這い出て帰ってきたなんて話もあるほど猫の生命力には驚かされるところがある、このように「生き返った」と思われても不思議ではないエピソードもあることから、これが「複数の命がある」と言われるようになったのかもしれない
家出をする
猫によっては外に出たら何日か帰ってこない猫もいる、飼い主が「ああ、もう何日も帰ってこない、これは、何処かで死んでしまったのかもしれない」と思っていたのに、ひょっこり帰宅「一度死んだと思われた猫が生きて帰ってきた」または「生き返った」になったのかもしれない
危険を省みない
高い木に登って降りられなくなったり走る車の前を横切ったりとなかなか危ないことも平気でやってしまう猫「普通1つしかない命ならそんなに危険なことばかりしない」そこから「いくつも命がある」に繋がったようだ
魔女の使い
昔から、猫、特に黒猫は魔女とセットで描かれることが多くあった、それは、中世ヨーロッパでは、光る目を持ち自由気ままで何を考えているか分からない、特に闇のように真っ黒な猫は不気味であるということで同じように不気味な魔女の使い魔に違いないと言われていたからである、その魔女は不死身であると信じられていたので使い魔である猫も当然不死身であると思われたのであろう
有名な「化け猫」
鍋島騒動
佐賀県に有名な化け猫伝説がある、その名も「鍋島騒動」、戦国時代、囲碁の名人・ 龍造寺又七郎が主君であり二代目鍋島藩当主・鍋島光茂を囲碁で負かしたことで機嫌を損ね、切り捨てられたことが物語の発端である、側近・半左衛門により事件は隠蔽されたが、又七郎の母・お政の方が事の真相を知り、怒りに狂い愛猫コマに復讐を託して自害をした、その時に流れた血をコマが舐め、化け猫となり光茂の側室・お豊の方を食い殺して乗り移る、その後、半左衛門の母親が食い殺されたり、奥女中の惨殺、関係者の原因不明の病など怪事件が頻発した、その後、家臣が化け猫の正体を暴き、退治して佐賀藩を救う、それ以降、鍋島家では一切猫に関わるのは禁止になったそうだ、これは、全くのフィクションであり、佐賀藩成立時に発生した鍋島家と旧主家の龍造寺家との間の権力闘争が元になっていると言われてる、佐賀県白石町の秀林寺には、この騒動と関係するとされる「猫塚」がある
藤原定家「明日記」
鎌倉時代初期、藤原定家が残した日記で「猫股と言う獣が出て一晩で七、八人の被害者が出た、目は猫のようで体は犬のようだった」という奈良からやってきた使者の話がある
ゲゲゲの鬼太郎の「猫娘」
1960年代に漫画家水木しげるさんが発表しアニメ化されシリーズが今なお続く名作「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクター「猫娘」が化け猫である、猫娘は、主人公・鬼太郎の友達で、公式では「ねずみ男と同じ半妖怪」とある、要するに半分は人間で半分は猫ということである、まさに立派な化け猫で容姿は尖った耳と猫目以外は人間の女の子と大きな違いはない
緑川ゆき「夏目友人帳」のニャンコ先生(斑)
漫画家緑川ゆきさんの作品「夏目友人帳」のキャラクター、ニャンコ先生(斑)も化け猫と言えるかもしれない、幼い頃に両親を亡くした夏目には人には見えないもの(妖怪)が見える、そのことでトラブルに巻き込まれることが多く親戚をたらい回しにされる、高校生になってようやく落ち着いた生活を取り戻した矢先に夏目はひょんなことから祠に封じられた妖怪・ニャンコ先生(斑)の封印を解いてしまう、ニャンコ先生(斑)は仮の姿が招き猫である、友人帳という祖母レイコの残した遺品を巡り妖怪に襲われるようになった夏目とある契約を得て夏目を守ることになったニャンコ先生(斑)との心温まり、ときに泣ける物語である
その他の「化け猫」
他にも様々なところで化け猫は活躍している、小説では、かたやま和華の「猫の手、貸します 猫の手屋繁盛記」シリーズ、旗本の跡取りだが、ある事情で白猫の姿になってしまった宗太郎(通称:猫太郎)が、よろず請け負い家業「猫の手屋」を舞台に善行を積んで人間の姿に戻るために奮闘する物語、和製ホラー映画として人気を博した「怪〜ayakashi〜」の続編「モノノ怪」の中にも、化け猫のエピソードがオムニバス形式で登場している、時代のせいか今の化け猫は怖いよりも愛される化け猫が多い、かの有名な「妖怪ウォッチ」の「ジバニャン」も化け猫かと思っていたら「地縛霊の猫」であった